ひとくちに「競馬が好き」といっても、様々な形があると思います。
競馬予想をそれぞれの予想方法で的中させて稼ぎたいのか、サラブレッドの系譜に惚れ込んだのか、レースを観戦することが好きなのか。いずれにしても、競走馬というものが中心にあることで成り立っているものです。
今回はそんな、競走馬の歴史や現代日本の競馬予想、果てしない血統の世界まで、なるべく初心者でも親しみやすく書かれた書籍を紹介していきます!
馬券裁判
一発目からガツンと重たいタイトルでいきますが。
約6年前、TVでも報じられた「馬券裁判」の当事者、卍(まんじ) 氏の著書です。
億を越えるプラス収支を実現させた著者のもとに査察が入り、脱税で起訴されるまでの顛末を細かにしるしています。
2015年に発売されたものは絶版となりましたが、2018年に新版が発売された人気作でもあります。
なかなかキャッチーなタイトルですが、中身はいたって真面目です。競馬予想ソフトを渡り歩いた競馬ファンには、共感できるものがありますし、「勝つ」ことに執着した思考論には目を見張るものがあります。
ひたすらに仮説を立て、試行錯誤し、不要なものを省いていく。自分だけの勝ちパターンを身に着ける。
ラクして勝てるような具体的な予想ではなく、努力と根気で勝利をつかみ取るために著者が取り組んだ方法論、思考論です。株式投資をされる方や経理職のお仕事など、お金にシビアで、本気で勝ちたい人には、興味深い本でしょう。
査察が入るくだりは、サスペンスやミステリーの様相を呈しており、読み物としても面白いです。
競馬で喰うためのラップタイムの教科書
続いては、具体的な予想方法ですね。ラップタイム理論です。
人間が走るとき、例えば箱根駅伝の5区には「山の神」と呼ばれる、特筆して上り坂に秀でたランナーがたびたび出現します。
馬も同様で、府中専用機、小回りが得意、夏場に強いなど、個性があります。
ラップタイム理論の優秀な点は、
自身が走るコースを選べない競走馬自身の能力を、過去に走ってきたコース形態やタイムから逆算して推測できる点にあります。ラップタイムの示すものが非常に分かりやすく解説されていて、まさしく教科書の名に恥じないものとなっています。
時計は馬場コンディションに大きく左右されるため、ダート条件戦において、最も真価を発揮しやすいものと著書では述べられています。どんな予想万能ではなく、使い分けをする読者自身の選択に委ねられているということですね。
また、同著においても読者自身で考えることに対する要求があります。
上記した馬券裁判内でも言えることですが、考えず・改善せず成功した人はいないということですね。
競馬の血統学
ストレートなタイトルで、何度も重版されている名著です。
血統表を見るのが好きな方なら、誰もが目にしたことのある大種牡馬、セントサイモン、ハイペリオン、ネアルコ、ノーザンダンサー、サドラーズウェルズ…。
1900年代初頭の資料から、欧州・北米の種牡馬に対する価値観、その変遷、進化する血統と科学との共存共栄を紐解きます。
奥が深すぎる血統の世界ですが、どの仮説も確定的な根拠は信頼に薄く、敢えてブラックボックスにしているフシもみられます。
謎が謎を呼ぶ、競馬フリーク・血統オタクのための資料ともいえるでしょう。
勝ち馬がわかる 血統の教科書
さきほどは歴史とロマンの血統学でしたが、こちらは現代競馬に則った、競馬予想に使える血統学ですね。
血統予想家の代表格、亀谷敬正氏の名著です。数々のベストセラーを生み出し、最近ではYouTubeチャンネル内にて、ホリエモンとともにG1観戦をするなど血統予想家の顔と言える大活躍をされています。
本については、血統が競走馬に与える影響や、その根拠を、著者自身が体験してきた理論に基づいて解説しています。端的に「得意コース」なども掲載されているため、初心者にもとっつきやすい内容といえます。
一方で、著者ほどの人物をもってしても競馬とは思うようにならないもので、前述した競馬の血統学を読んでいればこそ、現代競馬予想家の断定的な言い回しに違和感を覚える方もいるかもしれません。
要は、生き物のことだから、傾向・データ通りにはいかないよ という意見です。
どちらもそれぞれの視点で真理を探求しているからこそ、意見が対立したとしても、血統学は楽しいのだと思います。是非、競馬の血統学と併せて読むことをおすすめします。
オーナー・サイダー
著者である小宮城氏は、圧倒的な読者数を誇るマンモス競馬ブログを運営。
JRAを除いた(?)現代競馬最大の権力者である「馬主」にフォーカスし、トレセン関係者と通じることで「ヤリ」馬を導き出すオーナー・サイダーの初の単行本。
競馬界のブラックボックスを暴く著者の勇気は称賛に値しますし、ネット社会によって顕在化した、この時代の寵児を競馬ファンとして知っておかなくてはならないと思います。
私見ですが、競馬に対して、純粋な勝負の世界と思いたい一方で、あくまでも競走馬は経済動物であるという側面をもつと理解して、競馬とつきあっていかなくてはならないと思います。
本著プラス、著者のブログを併せて読むことをおすすめします。最新の内容と、週末に使える情報が満載です。
馬場のすべて教えます
グリーンチャンネルにも出演中の人気キャスターの競馬ブックコラムが書籍化。JRA土木課の協力のもと、徹底して馬場を研究。
芝の育成苦労話や、JRAHPでも目にする「エアレーション作業」の解説。果ては高速化によるケガの増加説への見解など、基礎的でありながら、マニア垂涎の内容となっています。
非常に有意義な文献のようでもあり、馬場状態はどう判断するのか、毎年新刊を出しても買いたいほどに価値があります。単純に読み物としても面白いです。
「番外編」ザ・ロイヤルファミリー
番外編として、レーシングマネージャーの立場から、競走馬を取り巻く人間模様を描いた小説「ザ・ロイヤルファミリー」をご紹介。
山本周五郎賞・JRA馬事文化賞をW受賞した同書は、第一に登場人物のキャラクターが魅力。
片親で育ち、その父を亡くした主人公が、失意の中で税理士として社長秘書になる。その第一部はその社長「山王耕造」が愛馬ロイヤルホープとともにG1制覇に挑むお話です。
トントン拍子に話が進むものの、第二部以降、書き方・目線によって分かりづらさ、読みづらさを感じる方もいるかもしれませんが、慣れてくればそれも味だと思えてくるレベルのように思います。
賛否あるのは確かですが、むしろ面白いのは競馬界の外から中にリアリティを持って移行していく第二部であり、受け継がれる耕造の意思やロイヤルホープの血が広がりゆく様は、オーナーシミュレーションゲームを追体験しているような、気持ちにさせてくれます。
あまり触れるとネタバレになってしまうので。一気に読みたい作品です。
まとめ
歴史とロマンの競馬血統学から、現代日本競馬の予想方法や人間模様まで、幅広くおすすめいたしました。
いずれにしても、これらの関連雑誌を読むことで、競馬や競走馬そのものに関する見識が深まり、結果として自前の仮説を立てたり、検証にまた没頭していくなど、競馬ライフが充実することは間違いないでしょう。
自分のなかにある「競馬が好き」の裾野を広げ、限りない競馬の世界を謳歌していきましょう!
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